POLITICS (1) 

 「政治」ということばを辞書で引くと、①主権者が領土、人民を治めること。②対立する利害を調整して社会全体を統合するとともに、意思決定を行いそれを実行すること。とある。英語ではpoliticsに相当するのだろうか。語源辞書によると、politicsの語源はギリシャ語のpoli(都市)から由来し、同じ語根から派生した単語に、policy(政策、方針)、police(警察)、metropolis(主要都市)、politician(政治家)などがある。語源から想像すると、人が集まり都市が形成され、必然的にそこに集まる人々の間で様々な利害が生まれ、それを調整する必要が生じたことから、「政治」が生まれて来たということなのだろう。英語でpoliticsといった場合は、②の意味が強いのだろうか。まさにpoliticsということばには「下から上」へのベクトルに貫かれている響きがある(②はなんとなく三権分立のエッセンスを意識した包括的な文章で、政治の持つベクトルを感じさせない文章にも思われるが、その辺は触れないでおきたい)。一方、日本語で「政治」というと、どうも①のニュアンスの方が強いように思われる。そこには「上から下」へのベクトルが見て取れる。

 ①の意味に相当する言葉は、本来「政治」ではなく「統治」なのではないか。英語で言うところのgovern。governの語源も調べてみると、ギリシャ語のcyber-(かじをとる)に由来するらしい。このgovernという言葉には、「支配・被支配」という関係がしっかり明示されている印象を受ける。国を治めることはgovern a nation、国を治める政府はgovernmentで、「権力」の在り処がはっきりと示されている。一方日本では、governmentを「国」と言い、governを「政治」と言って、権力の在り処を曖昧にする。曖昧にすることにより、governmentやgovernor(統治者)の責任を曖昧にする。そればかりか、「政治」ということばが、薄汚れて腹黒くそして鬱陶しいイメージを内包し、下から積み上げていく政治のダイナミクスを阻害している。ゆえに「下からの政治」は唾棄されて、社会の根本を揺るがすに至っている。

 政治には①「上からの政治」と②「下からの政治」がある。日本語の「政治」はどうも①に親和性がある。そして①governと②politicsの区別が曖昧だと述べた。せめて「国」の責任を、「政府」の責任と正しい言葉を使い、現政府が統治としての政治の主体であることを明示すれば状況はかなり良くなると思う。しかし、今日本の置かれている「政治」の問題は、「統治」としての政治の問題だけではなく、社会運営における「下からの政治」の脆弱性という問題でもある。だから、政治の含有する「下からの政治」の意味を再評価しないといけないと思ったりする。ところが「政治」という漢字自体が①に強くコミットしているし、①と②は視座が完全に異なるから、おなじ政治という言葉であっても既に対立概念でさえある。この国の政治の不幸はpoliticsが「政治」ということばで囲われていることによると言っても過言ではないのではないか。そしてもはや言葉の厳密な使い分けや定義では、②の意味を止揚することは不可能なのではないか。それではいっそ、「下からの政治」に相当する言葉を創生してみてはどうだろうか?

 まさに「政治改革」だ。

 昔は「自治」なんて言葉があったが、この言葉も黴が生えてしまっている感がある。いまいちダイナミズムがないのが欠点だ。なぜなら政治はベクトルこそがその本質であるからだ。下からの政治を考えたとき、ベクトルのその始点はどこに据えるべきであろうか。僕はその始点は「対立する利害を調整すること」に据えたいと思う。利害の調整と言うとどす黒い響きが宿るが、簡単に言えば、「納得しあうこと」、かっこ良く言えば「コンセンサスを得ること」と言い換えることが出来そうだ。ここに新しい言葉を創生したい。
 そして僕は、「下からの政治」を表す言葉として、『納得』ということばを導入してみてはどうかと提案したい(かなりダサい。ダサいという言葉自体がダサいが・・・)。

 「最近の政府どうよ?」「納得できないよね。(=政治ではない。という意味)」
 「年金問題酷いよね。」「うーん、あれじゃ納得できないよ。(=あんなもん政治じゃない。という意味)」
 「最近、強行採決ばかりで物事が決まっていくね。」「やってる本人達もあれで納得できるのかねェ。(あれで政治してるのかね。という意味)」

 「今日、PTAで夜話し合いがあるんだけど、最近責任の擦り付け合いというか、お互いが言いたいこと言い合ってるばっかりで、なんだか気が重たいよ。あれじゃ何とかしていこうとか、協力してやりましょうっていう感じにはならないよ。」
 「PTAの話し合いをさー、『納得』とかいう名前にしたらどうなん?今日、PTAの「納得」があるの、みたいに。中国語みたいでちょっと???かな。でもそうしたら、「どうですか?納得?」「うーん、まだちょっと。」「納得するために、ほかの方どうですか?」「こんなんどうですか?」「そうですね、まあ納得。」っていう感じで、結構面白い会になるんじゃない?」(おー、「納得」ということばは、なんと建設的で民主的でかつ政治的な概念を内包した言葉なんだろう。)

 「明日までに○○してくるように、って突然言われてもねェ、納得できないっすよ。」「つべこべ言わずにやれ!!(=社会性の無視)」
 「明日までに○○してくるように、って突然言われてもねェ、納得できないっすよ。」「そう言わずにお願い。俺も納得できないこと引き受けざるを得ないんだから。」「じゃ、お互い納得しあえるようにしましょうよ。」(そう簡単ではないが、連帯感の芽生え)
 「明日までに○○してくるように、って突然言われてもねェ、納得できないっすよ。」「そう言わずに、これ¥で納得してくれない?」(これも一つの納得だよね)

 どうです? 「納得」っていいと思うのですが・・・。納得できない。
 と、言うことで、「納得」については改めて考察したいと思ってます。
 
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by pantherH | 2007-06-14 08:14 | Pではじまることば
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